SESエンジニアの副業完全ガイド|案件獲得ルートと就業規則の確認
SES在籍中にエンジニア副業を始める完全ガイド。就業規則の確認方法から、副業がバレるリスクと住民税対策、クラウドソーシング・エージェント・SNSの3ルート別案件獲得法まで解説。バックエンドエンジニアが月10万円を達成するロードマップも網羅する。

フリーランス1年目は、エージェント経由で教育系スタートアップの案件に入っていた。月70万円(税抜)の契約で、仕事内容は申し分なかった。ただ一つ、気になっていたことがある。エージェントのマージンだ。
フリーランスエンジニアがエージェントに払うマージンは、案件単価の10〜30%と言われている。月70万円なら、最大で21万円がエージェントに流れている計算だ。それに気づいたとき、「案件さえ取れてしまえば、エージェントは必要ないのでは」という考えが浮かんだ。
その考えを実行に移したのが、フリーランス2年目。新卒時代の知り合いから声がかかり、直請けで契約することになった。単価は月80万円(税抜)。エージェント経由の70万から10万円アップした。現在はさらに副業を加えて月収120万円(税抜)になっている。
この記事では、筆者が直請けに切り替えた経緯と、実際にやったこと・困ったことを全部書く。
直請けに切り替えるかどうかを判断する前に、両者の違いを整理しておく。
| 項目 | エージェント経由 | 直請け |
|---|---|---|
| 単価 | 市場相場より低め(マージン分) | 交渉次第で高くなりやすい |
| 案件探し | エージェントが代行 | 自力で見つける必要がある |
| 契約・請求書 | エージェントがテンプレ提供 | 自分で用意する |
| 稼働報告 | エージェントのフォーマットに従う | 自分で作成 |
| 大手との契約 | 会社対会社で可能 | 個人では難しいケースが多い |
| 継続安定性 | 次案件を紹介してもらえる | 自分でリレーション維持が必要 |
| 向いている人 | 営業が苦手・大手に入りたい | 人脈がある・ある程度営業できる |
エージェントのマージンは通常10〜30%とされているが、実際の数値は非公開が多い。筆者の場合、エージェント経由70万 → 直請け80万という10万円の差があった。これはエージェントのマージン分がそのまま自分に入るようになったと考えられる。
ポイント
直請けは「単価アップ」と「手間増加」がセットになる。単価アップのメリットが手間を上回る状況になったら切り替え時だ。
エージェント経由で同じクライアントの案件を2〜3ヶ月以上こなしており、継続の見込みがある状態は切り替えの好機だ。
ただし、既存のエージェント経由の案件を「直請けに切り替える」のは、エージェントとの契約内容によっては制限されることがある。契約書の「競業避止・引き抜き禁止条項」を確認すること。多くの場合、契約終了から一定期間(6〜12ヶ月程度)は同じクライアントへの直接営業を禁じているケースがある。
現在の案件をそのまま直請けに変えるのではなく、別口で新しい直請けを取りに行くのが現実的だ。
「技術力で勝負できる自信がある」「ポートフォリオや実績が語れる状態になっている」というフェーズになれば、直請けで交渉を進めやすくなる。
エージェントがいない直請けでは、自分のスキルと実績が「営業資料」になる。GitHubの草が生えていること、過去に担当したシステムの規模感を語れることが、直接交渉での説得力につながる。
筆者のケースがまさにこれだ。新卒・前職・副業などで関わった人から「一緒に仕事をしよう」という声がかかった場合、これが最も自然な直請け移行のタイミングだ。
声がかかるのを待つだけでなく、自分からも「フリーランスで動いている」ことを定期的に発信しておくと機会が増える。
4つのルートを比較すると、成約率・単価・スピードのバランスが最も良いのは**「人脈」**だ。エージェントを使っている段階から、前職・現場の人間関係を丁寧に維持しておくことが、将来の直請けへの布石になる。
フリーランス2年目に入ったころ、新卒時代に在籍したSES企業でお世話になっていた人事担当者からメッセージが届いた。「新しいプロジェクトで協力してほしい」という内容だった。
筆者は当時、エージェント経由の教育系スタートアップ案件1本で稼働していた。案件の満足度は悪くなかったが、「マージンを取られている」という意識はずっとあった。エージェントは案件の取得フェーズでは確かに強い。ただ、案件が始まってしまえばエージェントからのサポートはほぼない状態だった。そうであれば「案件さえ取れてしまえばエージェントは不要」という結論は自然だった。
人事担当者が所属していたのは不動産をメインとするSIerで、規模は社員20名ほどの会社だった。業務委託・月140〜180時間の稼働で月80万円(税抜)という条件を提示された。
「いくらくらいで考えていますか?」と確認したところ、先方から80万円という数字が出てきた。こちらのスキルと経験を知っている相手だったため、交渉というより確認程度で終わった。
人脈経由の直請けの最大のメリットは、「相手があなたを知っている」という点だ。 エージェント経由では職務経歴書と面談で初めて会う相手に自分を売り込む必要があるが、人脈経由では信頼がすでにある状態から始まる。交渉のハードルが根本的に違う。
エージェント経由の単価は月70万円だった。直請けに切り替えて80万円になった。10万円の差は、エージェントのマージン分がそのまま自分に入るようになった計算に近い。
| 項目 | エージェント経由 | 直請け |
|---|---|---|
| 月単価(税抜) | 70万円 | 80万円 |
| 差額 | — | +10万円/月 |
| 年換算の差 | — | +120万円/年 |
現在は副業のスタートアップSaaS案件(月40万円)を加えて、合計月120万円(税抜)の体制になっている。副業案件についても、大手自社開発時代に築いた人脈からの紹介だ。直請け・副業ともに「人脈が入り口」という共通点がある。
直請けに切り替えて一番「手間が増えた」と感じたのが、請求書と稼働報告書の自己作成だ。
エージェント経由のときは、エージェントがテンプレートを用意してくれていた。月末に稼働時間を入力して提出するだけで済んだ。直請けではこれらを自分で用意する必要がある。
個人事業主の請求書に必要な項目は以下だ。インボイス制度への対応が必要な場合は「登録番号(T+13桁)」の記載も必要になる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行日 | 請求書を発行した日付 |
| 請求番号 | 管理用の連番(任意) |
| 請求先 | クライアントの会社名・担当者名 |
| 請求元 | 自分の屋号または氏名・住所・連絡先 |
| 振込先 | 銀行口座情報 |
| 品目 | 「○月分 業務委託費」など |
| 金額 | 税抜き金額・消費税・合計 |
| 支払い期限 | 例:「翌月末払い」 |
| 登録番号 | インボイス事業者の場合のみ(T+13桁) |
請求書はExcelやGoogleスプレッドシートでも作れるが、会計ソフトを使うと自動生成できて管理が楽になる。 筆者はfreee会計を使っており、請求書の発行・管理・経費計上が一元化されている。
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クライアントによっては稼働報告書(勤怠報告書)の提出を求められる。フォーマットはクライアントが指定することも多いが、指定がない場合はGoogleスプレッドシートでシンプルに作成する。
記載内容は「日付・稼働時間・作業概要・月合計時間」が基本だ。最初のうちはクライアントに「フォーマットはありますか?」と確認するのが一番早い。

直請けでは契約書の内容確認も自分でやる必要がある。エージェントがいる場合は会社間の契約が盾になるが、直請けでは個人と法人の契約になる。
特に確認すべき主な項目は以下だ。
注意
「知り合いだから大丈夫」と口約束で進めると後でトラブルになるケースがある。仲の良い相手でも契約書は必ず取り交わすこと。
直請けに切り替えると、エージェントという「緩衝材」がなくなる。その分、自分で備えなければならないリスクが2つある。
① 業務上のトラブル(損害賠償リスク)
直請けで成果物に問題が発生した場合、個人が損害賠償を請求されるケースがある。大企業と違い、フリーランスは1件の請求で経営が揺らぐ。
② 支払い遅延・資金ショート
エージェント経由では支払いサイトが短いケースが多いが、直請けではクライアントによって「翌月末払い」「翌々月払い」など支払いが遅くなることがある。複数案件を掛け持ちする場合、タイミングによっては手元資金が一時的に不足するケースもある。
これらに対応するサービスとして、**FREENANCE(フリーナンス)がある。フリーランス向けの「お金と保険」プラットフォームだ。2018年にGMOクリエイターズネットワークが開始したサービスだが、同社がフリー株式会社の完全子会社となったため、現在は「FREENANCE by freee」**としてfreeeが提供している。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| あんしん補償 | 業務遂行中の事故などを補償。補償の種類ごとに上限額が異なり、業務過誤(情報漏洩・著作権侵害など)は上限500万円。どの補償がどの会員プランに付くかは公式の約款・あらましで確認すること |
| 即日払い | 請求書を最短即日で資金化できるファクタリング。手数料は会員プランにより 3.43%〜10% |
| フリーナンス口座 | 屋号名義の収納代行口座。口座維持費0円 |
「無料で全部補償される」と思って入らないこと
あんしん補償は補償の種類ごとに上限額も、対象となる会員プランも異なる。
業務過誤(情報漏洩・著作権侵害など)の上限は500万円で、
エンジニアが気にする「納品物の不具合」はここに含まれる。
どの補償が無料会員に付くのかは、公開ページだけでは読み取れなかった。
加入を検討するなら、必ず公式の「あんしん補償のあらまし」PDFで
自分のプランの補償範囲を確認してほしい。
筆者自身は賠償責任保険に入っていない。知り合い経由の契約が中心で、2年間ヒヤリとした場面も なかったからだ。この判断の詳細はフリーランスの資金繰りと賠償リスクに書いた。
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筆者のケースのように、相手があなたのスキルをすでに知っている場合、交渉はシンプルだ。「いくらで考えていますか?」と聞くと先方が数字を出してくれることが多く、その数字が相場に近ければそのまま受けてよい。
相手が出してきた数字が低い場合は「現在の相場が月〇〇万円程度なので、〇〇万円でお願いできますか」と根拠を示して交渉する。闇雲に高い数字を出すより、「なぜその金額が妥当か」を説明できる状態にしておくことが重要だ。
初めて直請けの交渉をしたとき、相手から提示された月額が思っていたより3割低かった。あのとき相場を事前に調べていなかったのが完全に失敗で、交渉もうまく進められなかった。今ならFindyやレバテックで事前に相場観を掴んでから交渉に臨む。
フリーランスエンジニアの市場単価は、スキル・経験年数・稼働形態によって大きく異なる。以下は2026年時点のおおよその目安だ。
| スキル・経験 | 月単価の目安 |
|---|---|
| バックエンド3年・PHP/Laravel | 60〜80万円 |
| バックエンド5年・Go/AWS | 80〜100万円 |
| アーキテクト・テックリード | 100〜150万円 |
| インフラ・クラウド専門(AWS経験あり) | 80〜120万円 |
出典:レバテックフリーランス等の公開案件情報をもとにした目安値。
直請けで交渉する前に、エージェントを使って「自分のスキルでどれくらいの単価が提示されるか」を確認しておくと、直請け交渉の根拠になる。複数のエージェントに登録して条件を比較するだけでも有用な情報が得られる。
直請けがすべて正解ではない。以下に当てはまる場合は、エージェント経由を続ける方が合理的だ。
大手企業(社員数1,000名以上クラス)は、コンプライアンス上の理由から個人との直接契約を避けるケースが多い。「会社対会社の契約」にするためには、エージェントまたは自分の法人が必要になる。
筆者が現在稼働している20名規模のSIerとは個人で契約できたが、前職の大手自社開発企業では業務委託は必ず会社経由だった。大手の現場に入り続けたい場合は、エージェント経由の方が選択肢が広い。
直請けで継続的に仕事を取るためには、人脈形成・発信・交渉という「営業活動」が不可欠だ。「エンジニアとして技術に集中したい」「営業は苦手」という場合は、エージェントに任せる方が結果的に効率が良いこともある。
エージェントの価値は「案件の取得フェーズ」に集中している。案件が始まってからのサポートはほぼないが、次の案件を紹介してもらえる安心感は大きい。
フリーランスになりたての段階では、まずエージェント経由で案件を安定させてから直請けを検討するのが現実的だ。エージェントを使いながら人脈を作り、タイミングが来たら直請けに移行するという段階的な戦略が再現性が高い。
フリーランスエンジニアの収入・案件獲得ガイドも合わせて参照するとよい。
Midworksで案件を探す →
単価自体は上がりやすいが、「案件が途切れるリスク」も上がる。エージェントは次の案件を紹介してくれるが、直請けでは自分で継続案件を確保する必要がある。
1社直請けで稼働している状態で案件が終了すると、次案件探しに時間がかかる可能性がある。リスク分散のために複数案件の掛け持ちや、副業案件との組み合わせを検討するとよい。
主なリスクは「請負契約」と「準委任契約」の違いだ。
| 契約種別 | 特徴 | リスク |
|---|---|---|
| 準委任契約 | 稼働時間に対して報酬発生 | 瑕疵担保責任なし |
| 請負契約 | 成果物の納品に対して報酬発生 | 品質不備時の責任あり |
フリーランスエンジニアの多くは準委任契約(SES類似)で稼働する。請負契約になっている場合は、成果物の品質に対する責任が発生するため注意が必要だ。
2023年10月開始のインボイス制度により、適格請求書発行事業者(インボイス事業者)の登録を求めるクライアントが増えている。直請けでクライアントに請求書を発行する場合、相手企業の仕入税額控除のために登録番号の記載が必要になることがある。
登録は国税庁のe-Taxサービスから行える。登録すると消費税の申告・納付義務が発生するため、税理士に相談しながら進めるのが安全だ。
税金・確定申告周りの詳細はフリーランスエンジニアの節税完全ガイドに詳しく書いている。
筆者の場合、声がかかってから契約締結まで1〜2週間、稼働開始まで1ヶ月弱だった。人脈経由なので「実績確認・面談・条件交渉・契約書締結」という流れがスムーズだった。
一方、初めて直請けを狙う場合(面識がない相手や紹介なしのルート)は、最初のコンタクトから稼働まで1〜3ヶ月かかることも珍しくない。並行してエージェント案件を続けながら余裕を持って動くことを推奨する。
不可能ではないが、リスクが高い。フリーランス1年目の段階では「フリーランスとしての信頼実績」がまだ乏しい。エージェント経由の案件をこなしながら実績を積み、2〜3年目以降で直請けを狙う方が失敗が少ない。
「前職の上司が直接声をかけてくれた」「強い人脈がある」という場合は1年目でも問題ない。あくまで「人脈ゼロの状態からいきなり直請けを狙う」のが難しいという意味だ。
単価更改のタイミングは多くの場合契約更新時だ。半年〜1年ごとの更新タイミングで「技術スキルの向上」「担当範囲の拡大」を根拠に単価アップを交渉する。
「去年より〇〇ができるようになった」「プロジェクトのこの部分を担当できるようになった」という具体的な実績を伝えると交渉しやすい。ただし、長期稼働しているクライアントとの関係を壊すリスクもあるため、交渉のタイミングと言い方は慎重に選ぶこと。
直請けへの切り替えは「タイミング・人脈・準備」の3つが揃えば自然と実現する。強引に切り替えようとするより、普段から土台を作っておく方が再現性が高い。
今日からできる3つのアクション
① 前職・新卒時代の知人に「フリーランスで稼働中」と近況報告する
② SNSのプロフィールに「PHP/Laravel専門・業務委託歓迎」と明示する
③ 会計ソフト(マネーフォワード等)を無料で使い始め、請求書発行の準備をしておく
エージェントを完全に否定する必要はない。「エージェントが必要な局面」と「直請けが有利な局面」を使い分けるのが、フリーランスとして収入を最大化する戦略だ。
大手と契約したい・営業が苦手という場合はエージェントを継続。人脈ができてきた・案件が安定してきたという段階で直請けを取り入れる。このハイブリッドで動くのが、2026年のフリーランスエンジニアとして合理的な選択だ。
まずはエージェントで市場単価を把握しながら、並行して直請けのパイプラインを育てることを推奨する。
Midworksに相談してみる →
単価を上げても、国民健康保険と住民税がどれだけ増えるかは別の計算になります。筆者が実際に払った金額(国民健康保険96万円・住民税約100万円)を出発点に、手取りの内訳を分解した記事があります。
手取りの内訳を見るSES在籍中にエンジニア副業を始める完全ガイド。就業規則の確認方法から、副業がバレるリスクと住民税対策、クラウドソーシング・エージェント・SNSの3ルート別案件獲得法まで解説。バックエンドエンジニアが月10万円を達成するロードマップも網羅する。
新卒SES2年→大手自社開発でチームリーダー→フリーランスで年収1000万を達成した筆者が、逆算キャリア設計の全体像を解説。SES時代の仕込み・自社開発の活かし方・フリーランス転向の準備リスト・人脈による案件獲得まで、全ステップを実体験で語る。
SESから自社開発、そしてフリーランスへ。年収350万→500万→1000万の実体験をもとに、スキル棚卸し・GitHub整備・エージェント比較・面接対策まで、転職活動の全工程を具体的に解説します。