エンジニアのマイクロ法人|国保96万円の実例で検証

去年の夏、国民健康保険料の通知書を開けて、年額96万円という数字を見た。住民税は約100万円、所得税は約150万円。合わせて年間350万円前後を税金と社会保険料に払っている計算になる。
「マイクロ法人」という言葉自体は前から知っていた。今年1月からは自分の状況に当てはめて調べ始めてもいる。だが、9ヶ月経った今も検討したまま止まっている。試算すらしていない。
この記事は「マイクロ法人をやった話」ではない。「検討して、止まっている話」だ。フリーランスエンジニアとして本業(直請け)と副業(スタートアップSaaS)の二本立てで働き、国保が上限に張り付いている立場から、何を見て、何にひっかかって、今どこで止まっているのかを実額とともに書く。制度の正確な数字は公式情報にあたって書いているが、実感と判断の部分は自分の言葉に限定している。
この記事の対象読者
- フリーランスとして売上が伸び、国民健康保険料が高いと感じ始めている
- 「マイクロ法人」という言葉を聞いたことはあるが、自分の状況で得になるか分からない
- 本業・副業のように、収入源が複数あるフリーランスで法人活用の余地を考えている
- 「法人化すれば得」という単純な話ではなく、実際に検討した人の迷いどころを知りたい
この記事の範囲
この記事が扱うのは「実態のある事業をどう法人に寄せるか」という合法的な選択肢の検討だけだ。実体のない法人への所得付け替えなど、事業実態を伴わない使い方には一切踏み込まない。また筆者はまだ法人化していない。制度の数値は国税庁・日本年金機構・協会けんぽ・中小機構・自治体の公式情報にあたって書いているが、実際の適用可否・最適な設計は税理士に確認してほしい。
マイクロ法人とは何か
マイクロ法人とは、従業員を雇わず、事業規模も小さいまま、社会保険料の最適化などを主な目的として個人が持つ小さな法人のことを指す通称だ。法律上の正式な区分ではない。
典型的な形は、個人事業主としての仕事は残したまま、その一部(または別の事業)を法人として切り出し、法人からは低めの役員報酬を受け取る、というものだ。役員報酬を受け取る以上、その法人の役員は健康保険・厚生年金への加入が原則義務になる。国民健康保険・国民年金から協会けんぽ・厚生年金に切り替わることで、社会保険料の負担構造が変わる——これがマイクロ法人が語られる最大の理由だ。
ただし、これは「所得を法人に移すほど得になる」という単純な話ではない。役員報酬をいくらにするか、個人に残す事業所得はどれくらいか、法人に固定費(後述する均等割など)がいくら乗るか。この組み合わせ次第で、得にも損にもなる。
「法人化」と一括りに語られることが多いが、目的で分けると整理しやすい。
| 個人事業主のまま | 一般的な法人化 | マイクロ法人 | |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | ー | 所得税と法人税の実効税率の差を使う節税、事業拡大・資金調達 | 社会保険料の負担構造の変更が主目的 |
| よく言われる目安 | ー | 課税所得(利益)800万円超 | 国保が上限に近い、または複数の収入源を切り分けられる |
| 従業員 | いない | 雇うこともある | 基本的に雇わない |
| 事業規模 | ー | 事業を拡大していく前提 | 小さいまま維持する前提 |
自分が調べているのは後者、社会保険料の負担構造を変える目的のマイクロ法人のほうだ。利益800万円という目安は主に前者(税率差を使う節税)の話であり、自分のように国保がすでに上限に達している立場では、判断の軸がそもそも違う。
著者の実額:国保だけで年96万円
制度の説明の前に、自分の実額を出す。数字を隠して一般論だけ書いても、この記事を書く意味がないと思うからだ。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 国民健康保険料(令和8年度) | 年96万円 | 神奈川県川崎市多摩区。賦課限度額に到達 |
| 国民年金保険料 | 月17,920円 | 1年前納を利用 |
| 住民税(概算) | 年約100万円 | |
| 所得税(概算) | 年約150万円 | |
| 税・社会保険の合計 | 年約350万円 |
川崎市の国民健康保険料は令和8年度から4区分
川崎市公式ページによれば、令和8年度(2026年度)の国民健康保険料の賦課限度額は、医療分67万円・後期高齢者支援金分26万円・介護分17万円・子ども子育て支援金分3万円の合計113万円。介護分は40〜64歳のみが対象のため、29歳の場合は介護分を除いた67万+26万+3万=96万円が上限になる。今回の実額(96万円)は、この上限にちょうど到達している水準だ。
この96万円という数字は、後述する「マイクロ法人の効果」を考えるうえで一番重要な条件になる。すでに上限に達している人と、まだ上限の手前にいる人とでは、マイクロ法人の効き方がまったく違う。
「高い」と感じた瞬間
金額そのものより、どこで「高い」と実感したかのほうが記憶に残っている。
一番効いたのは、納付書の封筒を開けた瞬間だった。年間の合計額が一枚の紙にまとまって出てくる。給与から天引きされていた会社員時代は、この金額を一度に見る機会自体がなかった。
会社員時代と比べて一番効いていると感じるのは、健康保険の会社負担分が消えたことだ。会社員なら保険料は労使折半で、給与明細に載る金額は実際の半分でしかない。フリーランスになると、その半分がまるごと自分の負担になる。
将来受け取れる年金額は、ねんきんネットで試算したことがある。国民年金のみの受給見込み額と、厚生年金がある場合の差は、数字として頭に入っている。この「厚生年金に入り直せば将来の年金額も増える」という点は、マイクロ法人を検討する動機のひとつになっている。
国保が上限に張り付いている人に、法人化はどれだけ効くのか
ここが今回、自分で一番整理しておきたかった部分だ。
「利益800万円を超えたら法人化」という目安はよく語られる。だが、これは所得税と法人税の実効税率を比較した話であって、社会保険料の話は別の軸だ。 国民健康保険は所得が上がるほど保険料も上がる仕組みだが、上限(賦課限度額)に達すると、それ以上いくら所得が増えても保険料は1円も増えない。
逆に言えば、すでに上限に張り付いている人が、所得の一部だけを法人に移しても、国保の負担は変わらない可能性がある。 個人に残った所得だけで、依然として上限に達していれば、法人に移した分はまるごと「上限を下回るための引き算」として機能しない。上限を下回るところまで思い切って所得を法人側に移さない限り、国保側の削減効果はゼロのままだ。
一方で、法人側に移した所得(役員報酬)には協会けんぽ・厚生年金の保険料が新たにかかる。ざっくりのイメージを表にする。
| 個人事業主のまま(上限到達時) | マイクロ法人(役員報酬を最低等級に設定した場合の概算) | |
|---|---|---|
| 健康保険・国保 | 96万円/年(本人が全額負担) | 約3.5万円/年(本人負担分。会社負担分が別途約3.5万円) |
| 年金 | 約21万円/年(国民年金、本人が全額負担) | 約9.7万円/年(本人負担分。会社負担分が別途約9.7万円) |
| 法人住民税 均等割 | なし | 7万円/年(赤字でも固定でかかる) |
| 合計(本人負担のみで比較) | 約117万円/年 | 約13.1万円/年 |
| 合計(本人負担+会社負担+均等割) | 約117万円/年 | 約33.2万円/年 |
この表の前提と限界
協会けんぽ(神奈川支部・令和8年度、健康保険料率9.92%)の最低等級(標準報酬月額58,000円)、厚生年金の最低等級(標準報酬月額88,000円、保険料率18.3%)で役員報酬を設定した場合の概算であり、労使折半後の金額。実際の等級は役員報酬の実額で決まる。また、この試算は「個人に残る事業所得がゼロに近い」という極端なケースの数字であり、実際に売上1,440万円規模の事業をこの水準まで法人に寄せるのが現実的かどうかは別問題だ。加えて、法人内に残った利益は「手取り」ではなく、将来引き出すときに改めて課税される。
この表が示しているのは「役員報酬を最低限に絞り、個人事業側の所得も上限を大きく下回るところまで削れば」という、かなり極端な条件での数字だ。自分のように本業と副業を合わせて年収1,440万円規模で動いている場合、そこまで思い切った切り分けが現実的かどうかは、まったく別の検討になる。
実態の伴わない事業分割は否認されうる
社会保険料や税負担を軽くする目的だけで、実体の乏しい法人に所得を付け替えることは、税務調査で事業実態を問われるリスクがある。契約主体・業務内容・請求先が明確に分かれていて、初めて「別の事業を別の法人が行っている」と説明できる。この記事はそうした実態のある切り分けの検討に限って書いている。
二本立ての事業を、どちらに寄せるか
自分の場合、収入源はきれいに二本に分かれている。
- 本業:新卒時代の縁でつながった直請け先。準委任(月額固定)、月額約80万円
- 副業:スタートアップSaaS企業。準委任(時間単価)、月額約40万円、土日稼働
この二本立てという構造自体が、マイクロ法人の検討では地味に効いてくる。実体のある別々の契約・別々のクライアントが最初から存在するので、「どちらか一方を法人名義に切り替える」という選択肢が、机上の空論ではなく現実的な話になる。
副業先は法人契約のほうがむしろ自然だと感じている。スタートアップ企業は業務委託先が法人であることに慣れている印象がある。本業の直請け先についても、関係値は良好で、法人契約への切り替えを自分から言い出すこと自体に抵抗はない。
直感としては、副業ではなく本業を法人に寄せるほうが現実的だと感じている。ただしこれは「なんとなく」の直感であって、試算に基づいた結論ではない。
前のセクションの論点に当てはめると、この直感には一応の理屈が乗る。本業(年収ベースで約960万円)を法人に寄せれば、個人事業側に残る所得は副業分(約480万円)を中心とした水準まで下がる。副業だけを法人に寄せた場合、個人に残る本業分(約960万円)だけでもまだ国保の上限に届く可能性があり、その場合は法人化しても国保の負担が変わらないまま、法人側の固定費(均等割・社会保険の会社負担)だけが増える結果になりかねない。
ただし、これはあくまで理屈の上の話だ。実際に川崎市の保険料率表に当てはめて、どこまで所得を移せば上限を下回るのかを計算していない。「試算はしたことがない」というのが、今の自分の正直な状態だ。
検討して1年、進んでいない理由
「マイクロ法人」という言葉自体は、フリーランス2年目にYouTubeで節税関連の動画を片端から見ていた時期に知った。小規模企業共済を知ったのと同じ時期だ。ただし、そのときは自分事として調べてはいなかった。
自分の状況に当てはめて調べ始めたのは今年1月から。9ヶ月経った今も、検討したまま止まっている。
止まっている理由を、想定されるハードルの中から順位付けすると次のようになる。
- 本業が忙しくて、単純に手をつける時間がない
- 設立そのもの(登記費用・定款・法人口座の開設)
- 法人の記帳・決算の事務負担
1位の理由は単純だ。シンプルに時間がない。 メリットが分かっていないわけではない。国保が上限に張り付いている実感も、将来の厚生年金の話も理解している。それでも、本業と副業を回しながら設立の手続きに時間を割く余裕を作れていない。これが率直なところだ。
2位に挙げた設立の手続き(登記費用・定款・法人口座の開設)は、金額そのものより「平日の日中にしか進められない作業がある」ことが引っかかっている。法務局や金融機関とのやり取りは、案件を抱えながら合間に済ませるのが難しい。3位の記帳・決算の事務負担は、個人事業の確定申告を毎年自分でこなしてきた延長で「やればできる」感覚はあるものの、法人の決算はそれとは別物という認識もあり、優先順位としては1位・2位の後ろに置いている。
「税務署にどう見られるか」という漠然とした不安や、取引先への説明の難しさは、自分の中では上位のハードルとして挙がってこなかった。取引先との関係値が良く、法人契約への切り替えも話が通じそうだと感じているためだ。むしろ、時間と手続きという「単純な物理的コスト」のほうが今の自分には効いている。
「自分に給与を払う」ことへの感触
マイクロ法人は、社会保険料を抑えるために役員報酬を低く固定するのが基本形になる。その結果、金額は小さいのに「毎月の給与計算・源泉徴収・年末調整」という事務作業が新たに自分の仕事として増える。
この点について、率直な感想としては「金額が小さいなら大した手間ではなさそうだ」と感じている。役員報酬を生活費に足りない額に固定し、残りを個人事業側の所得でまかなう形にすることにも抵抗はない。口座を分けるだけの話に感じる。
一方で気になっているのは、いま使っているfreeeが個人事業向けの1契約であること。法人用にもう1契約増えることは、固定費が増える要素として判断材料に入る。会計ソフトの契約が2本になるという地味なコストも、検討の中では無視できない項目だ。
役員報酬を低く固定するということは、毎月の源泉徴収額もごく小さくなるということでもある。個人事業の確定申告のように「年に一度まとめて向き合う」作業ではなく、「毎月、金額は小さいが必ず処理する」作業が新たに増える感覚に近い。金額の大小と、発生する事務作業の手間は必ずしも比例しない、という点は実際に検討して初めて意識した。
小規模企業共済との両立という壁
もうひとつ、自分にとって無視できない論点がある。小規模企業共済を月7万円(上限)で継続していることだ。
小規模企業共済は個人事業主と会社役員の二重加入ができない
中小機構の公式FAQによれば、個人事業主と会社等の役員を兼務している場合、両方の立場で同時に加入することはできず、「主として携わっている事業(地位)」のどちらか一方でしか加入できない。マイクロ法人を作っても個人事業を主たる仕事として残す形であれば、共済は個人事業主の資格で継続でき、掛金の枠(月7万円)も変わらない。ただし、法人側の仕事が「主」になるほど所得や稼働を法人に寄せてしまうと、この前提自体が崩れる可能性がある。
これは前のセクションで書いた「本業を法人に寄せるほうが現実的」という直感と、正面から矛盾する可能性がある。国保の上限を下回るところまで本業を法人に移せば移すほど、個人事業主としての実態は薄くなり、小規模企業共済を「個人事業主として」継続する前提が怪しくなる。逆に共済を守るために個人事業を主たる仕事として残せば、法人に移せる所得には自然と限界が生まれる。
この綱引きをどこで折り合わせるかは、社会保険の適用ラインと事業実態の両方が絡む判断で、今の自分では正直「試算すればわかる」というレベルの話ではないと感じている。
いまの節税策に「打ち止め感」はない
小規模企業共済は月7万円で上限まで使っているが、他の節税・資産形成の手段にはまだ余地があると感じている。マイクロ法人への関心も、その延長線上にある。
自分では判断しきれない論点
ここまで整理して分かったのは、マイクロ法人の効果は「利益がいくらか」だけでなく、国保がすでに上限に達しているか、事業をどう切り分けるか、既存の制度(小規模企業共済など)とどう両立させるかという、いくつもの条件が絡み合って決まるということだ。
自分の状況に当てはめると、社会保険の適用ラインの見極めと、事業を切り分ける際の実態の妥当性は、正直なところ自分では判断しきれない。ここを誤ると、思ったほど得にならないだけでなく、税務上のリスクを抱えることにもなりかねない。
顧問税理士を検討して見送った経緯
実は去年の年末にも、一度は顧問税理士を検討している。そのときに周りから聞いた相場感は年間20〜30万円ほどだった。ただし、実際にどこかの事務所へ問い合わせたことはない。あくまで「このくらいはかかるだろう」という感覚値で止まっていて、見送った。
マイクロ法人のように、社会保険の適用判断や事業の切り分けが絡む論点は、顧問契約を前提にしなくても、スポットの相談だけで十分に見通しが立つケースもある。感覚値だけで「高そうだからやめておく」と判断する前に、一度、実際の見積もりを確認してみる価値はあると考えている。
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自分の売上・経費・事業の分け方をそのまま入力して、税負担がどちらの形で軽くなるかの概算をまず自分で見たい場合は、以下のシミュレーターも参考になる。マイクロ法人の判断材料の前段として、法人化そのものの損得を確認しておくのもいい。
→ フリーランスの法人化シミュレーター|手取りの差を試算する
向いている人・向いていない人
ここまでの整理を、一般化できる範囲でまとめる。「マイクロ法人にすべきだ」と断定するつもりはない。向かない人も正直に書く。
| 向いている可能性がある人 | 向いていない可能性がある人 |
|---|---|
| 国保がすでに上限に近く、かつ収入源が複数に分かれていて、片方を実態のある形で法人に移せる | 収入源が単一で、事業を分ける実態を作りにくい |
| 事務作業(給与計算・記帳・追加の会計ソフト契約)に時間や外注コストを割ける | 本業が忙しく、設立・運用の手間を割く余裕がない |
| 小規模企業共済など既存の制度との整合を、専門家に確認しながら詰められる | 個人事業主としての実態を維持する必要がある制度に強く依存している |
| 均等割7万円・社会保険の会社負担といった固定費を織り込んでも十分な余地がある収入規模 | 国保がまだ上限に達しておらず、法人化の社会保険料効果が限定的 |
よくある質問
Q. マイクロ法人にすれば必ず社会保険料が安くなりますか?
必ずではない。国民健康保険料には所得に応じた上限(賦課限度額)があり、すでに上限に達している人が所得の一部だけを法人に移しても、個人に残った所得が引き続き上限を超えていれば国保の負担は変わらない。上限を下回るところまで思い切って所得を移す場合にのみ、削減効果が出てくる。加えて法人側には健康保険・厚生年金の会社負担分と、法人住民税の均等割(最低でも年7万円、資本金1,000万円以下・従業者50人以下の場合)が新たにかかる。
Q. 個人事業主のまま小規模企業共済を続けられますか?
個人事業を主たる仕事として残す形であれば継続できる。中小機構の公式FAQによれば、個人事業主と会社役員を兼務している場合、両方の立場で同時に加入することはできず、主として携わっている事業のどちらか一方でしか加入できない。掛金の枠(月7万円)も変わらないため、法人化によって共済の枠が広がるわけではない。
Q. 副業だけを法人にする、本業だけを法人にする、どちらがいいですか?
どちらが有利かは、法人に移した後に個人事業側へ残る所得が国民健康保険の上限を下回るかどうかで変わる。収入の大きいほうを法人に移すほど個人側の所得は下がりやすいが、その分、個人事業主としての実態が薄くなり、小規模企業共済などの継続要件との整合を検討する必要が出てくる。一般化できる正解はなく、自分の売上構成と既存の制度の両方を踏まえて専門家に確認するのが確実だ。
Q. 法人住民税の均等割は必ずかかりますか?
かかる。均等割は法人の利益に関係なく、赤字の年でも事業所が存在する限り毎年発生する固定費だ。資本金等の額が1,000万円以下かつ従業者数50人以下の法人であれば、都道府県民税と市町村民税を合わせた均等割の最低額は年7万円になる。
Q. 税理士に相談するなら、顧問契約を結ぶ必要がありますか?
必須ではない。マイクロ法人のように社会保険の適用ラインや事業の切り分けの妥当性を確認したいだけであれば、スポットの相談から始められるサービスもある。顧問契約の相場(年間20〜30万円程度と言われることが多い)を聞いただけで検討をやめてしまう前に、まずは相談内容に応じた見積もりを確認してみるのも一つの手だ。
Q. 国民健康保険が上限に達していない場合でも、マイクロ法人の検討は意味がありますか?
国保の上限にまだ余裕がある場合、法人に所得を移すことで実際に国保の負担が下がる余地は大きくなる。ただし、その分、健康保険・厚生年金の会社負担分や法人住民税の均等割といった新しい固定費も発生するため、「上限に届いていないから即座に得」とも限らない。自分の所得水準でどちらが軽くなるかは、個別に試算しないと判断できない。
Q. マイクロ法人の検討にはどれくらい時間がかかりますか?
制度を理解するだけなら数時間から数日で済むが、自分の売上構成・既存の節税制度(小規模企業共済など)との整合を含めて試算し、税理士に相談し、実際に設立・届出まで進めるとなると、まとまった時間が必要になる。本業・副業で稼働しているフリーランスほど、この「まとまった時間」を確保できずに検討だけで止まりやすい。
まとめ
マイクロ法人は、国保が上限に張り付いている自分のような立場でも、「検討すればすぐ得になる」ものではなかった。
- 国保はすでに上限(年96万円)に達しており、所得の一部だけを法人に移しても削減効果が出ない可能性がある
- 本業・副業という二本立ての事業構造は、法人への切り分けを現実的な選択肢にする一方で、どちらを寄せるかの判断が単純ではない
- 小規模企業共済を個人事業主として継続する前提と、法人に所得を寄せる方向性は綱引きの関係にある
- 検討を進められていない最大の理由は「本業が忙しくて時間がない」という単純な事実
- 社会保険の適用ラインの見極めと、事業を切り分ける実態の妥当性は、自分では判断しきれない領域
試算していないことも、9ヶ月止まっていることも、そのまま書いた。「マイクロ法人をやるべきか」を検討している人にとって、うまくいった話より、こうした止まっている過程のほうが参考になる場面もあると思う。
税・社会保険の基本的な仕組みを整理し直したい場合はフリーランスエンジニアの確定申告・節税完全ガイド、既存の節税制度との兼ね合いを確認したい場合は小規模企業共済 完全ガイドも参考にしてほしい。法人化そのものの損得を自分の数字で試算したい場合はフリーランスの法人化シミュレーターを使ってみてほしい。